保険フロートの「長期化・拡大・安定化」に関する実装と進捗
「保険の保険」
~ 高度動物医療等の内部還流化による構造的リスクに対する実体的ヘッジ ~
全文

●フロート運用の位置づけについて
保険会社は、将来の保険金支払い責務に備えるため、保険料を先んじて受領している。
この「統計的に保険金支払いが発生するまでの期間に手元に存在する資金(フロート)」を、社会の発展に資するように運用すること(フロート運用)」は、保険会社固有の重要な役割であると同時に、中長期的な競争力の源泉である。

●フロートにおける「期間・量・質」の強化について
フロートの価値は、「量」もさることながら、「期間」と「質(安定性・予測可能性)」が重要である。
これらは、保険の進化段階(保険1.0〜3.0)を通じて、構造的に強化し得る。
―保険1.0:リスク引受による安心の提供
事故・疾病発生後の治療費負担に対し、迅速かつ心理的ケアを含めて対応することで、社会的セーフティネットとしての基礎的機能を果たす。
―保険2.0:予防の支援(発症確率の低下)
保険加入者の真のニーズの一つである予防を支援することにより、疾病の発症確率および発症時期の後ろ倒しが生じ、結果としてフロート期間の長期化および累積フロート量の増加に寄与し得る。
―保険3.0:高度医療への最適接続(支払分散の滑らか化)
傷病発症後においても、侵襲が少なく、後遺症リスクが低く、成功率の高い医療へのアクセスを支援することで、保険金支払い自体の最適化、時間的・金額的分散が縮減され、フロートの質(キャッシュアウトの安定性・予測可能性)の改善につながり得る。

●フロート強化と経済的循環
これらの取り組みは、

•保険加入ニーズの最大化
•継続率の向上
•マーケティングコストの低下

を同時に実現し、結果として「新規フロート獲得コストの構造的低下(実質的なマイナス金利化)」をもたらし得る。

●ペット保険におけるフロートの特性
ペット保険は年払い・月払いであり、単純なフロート期間自体は短い。
しかし、

•地震保険等に見られるような広域同時多発リスクが存在せず
•ペティロス(小口・高頻度損失)の集合体であるため、保険金支払い時期の分散効果が極めて大きい
•継続率が高く、将来キャッシュフローの予測可能性が高い

という構造を有している。
これは、「短期でありながら、時間的に滑らかで崩れにくいフロート」という、他の損害保険には見られない特性に繋がっている。

以上より、ペット保険においては、フロートの「期間・量・質」をさらに強化する施策を、意図的かつ構造的に講じることが重要である。それは単なる運用の高度化ではなく、保険を「金融商品」ではなく、「生物学的・行動学的システム」として設計する行為に等しい。フロートは与えられるものではない。予防・医療・行動変容を通じて「設計し獲得し続ける」ものである。

■第一部 ペット保険の成長性と構造化リスクへの対処 ~「保険の保険」~について

ペットと私たちの関係 ~ペットに対する本質的需要について~
科学技術の進化は生活を豊かにする一方で、人と人との接点が希薄化しやすい側面も指摘されている。
ペットは人々に無償の愛と情緒的な安定をもたらし、「我々の心の発電所」として社会構造的に機能している側面がある。
現代社会が抱える様々な不安と、いわば逆相関的に存在するペット需要の強さこそが、景気変動下でもペット関連支出が底堅い構造的要因と考えられ、投資における有効なポートフォリオの構成要素としても機能し得る可能性がある。
一方で、ペット医療においても医療費上昇という構造リスクへの対処が必要となっており、本資料の主題であると同時に、当社グループが取り組むべき構造的課題であると認識している。

●1.ペット保険の成長性について

(1)需要は堅調
①ペット保険の需要=「将来における医療費負担の不安」
②高度動物医療の需要は順調
③しかし、高度医療は医療費の高額に繋がり、ペット保険の収支悪化の構造的リスクでもある

(2)アニコム損保の状況(新規・継続)

(3)競合他社の状況等
①参入直後から、ほぼすべての競合社において収支悪化の傾向
→構造的課題の可能性

②セカンダリー・チャネルは、既にリスクを高度に感じている方の加入が多くなり易い = リスクの逆選択に繋がり易い
→UW(アンダー・ライティング)の高度化が必要

③アニコム損保ではプライマリー・チャネルも重視
ⅰよりリスクの逆選択が少なく、飼育環境・健康情報の連続性を確保しやすく、適正飼養の支援を通じて長期的な関係性を築きやすくLTVも大きい
プライマリー・チャネル(ペットショップ・ブリーダー)を比較的重視している。

ⅱこれまで、最も収益力が高い高度医療を外部流出させてきた。
これは、ペット保険の収支・リスク構造に最も影響の大きい領域であり、高度医療を保険と分断したまま外部依存してきたこと自体が、構造的リスクであった。
内部循環化は、結果として、グループ全体としての持続的な収益基盤の強化にも資するものと考えている。

④保険引き受けは、リスクに応じて行わなければならない同じ品種であっても、遺伝子の多様性の高低によりリスクが異なる。
*ペット保険は本質的に生物学リスクを扱っている。

⑤運命(遺伝子の多様性)によるリスクも、日常生活の努力で変えられる可能性がある

●2.構造的リスクへの対処の必要性

(1)アニコム損保における収支に影響を与え得るリスクの状況
①医療費は年々上昇している
②高度医療はリスク増加につながり得る
ⅰ通院・入院・手術費用の単価の推移
ⅱ寿命は延びている
ⅲ長寿は医療費増加リスクに繋がり得る

(2)科学技術の進化とリスクとの関係
①多くの保険種目において科学技術の進化はリスク減少に寄与地震保険における耐震性向上、自動車・航空機保険における操縦安定性の向上等
②医療保険においては、科学技術の進化はリスク増加に寄与する可能性
ⅰ科学技術の進化は、治せる疾患を増やし、長寿化を推進
ⅱ長寿化は、さらなる治療難度の高い疾患の増加へ
ⅲ結果的に、医療費を構造的に増加させ得る可能性がある
③ペットでは、リスクが先にヒットする可能性ペットの寿命はヒトの5~10分の1であり、医療技術進化を受けた構造的医療費増加リスクが先にヒットする可能性があり、対応が重要である。

(3)医療保険は、高度医療に対応せざる得ない
①対象外化は医療保険ニーズに反する
②保険料の引き上げは、さらなる逆選択に繋がるリスクがある

(4)そもそも、医療保険は、医療があって初めて存在する
①保険と医療の分断こそが構造的原因
②高度動物医療自体もブランド化・機械化・標準化・AI化し、内部循環化することで、ペット保険に対する実体的ヘッジとして機能し得る。

(5)ポートフォリオとしての有効性について
①先行の高度動物医療事業者を参考に、μ「期待値(収益性等)」・σ「リスク」・ρ「ペット保険との相関性」を見たところ、アニコムグループよりも、μは高いが、σは比較的低く、相関は低い。
→事業ポートフォリオとしても有効である可能性が高い。

②高度動物医療は、「保険の保険」となり得る可能性
高度動物医療の取り組みは、単なる内製化や事業多角化ではなく、ペット保険に内在する高額医療費リスクを外部に流出させず、内部循環となり得て、実体的ヘッジ「保険の保険」として機能する可能性がある。
*自動車・航空機保険においては、既に、自動運転によりリスク自身が変容し、その対応が急がれている。
当然に、医療保険においても、手術等の自動化によりリスクの変容が見込まれている。

●3.「保険の保険」の実装状況について

(1)売り上げの状況
(2)診療科・地域分散・紹介ルートの状況
(3)提携病院の拡大の状況

■第二部 さらなる収益拡大に向けて ~ ペットにおける新たな生活習慣病への対応 ~

●1.保険金支払いにさらなる健全化余地がある ~ 原因未定での保険金支払いの状況 ~

●2.若齢における加齢性疾患発症の状況

「原因未定の疾患が多い & 若齢から加齢性集患が多い」
→これらは、純血に見られがちとされ、遺伝要因として認識されてきたが混血でも同様の状況である
→免疫不全・疲弊があり得る可能性がある

●3.ペットにおける新たな生活習慣の偏り

(1)ヒトとペットでは免疫成熟環境に非対称性がある
多様な食べ物を食べ、外出するヒト VS 単調な食べ物を食べ、外出が少ないペット

(2)ペットにおいて、単調な食習慣が免疫の未成熟となっている可能性
①ワクチン・・・で敵(×)を覚えているのは
●不正規ルート(口からではない)
●炎症反応
→敵(×)と識別し、記憶されやすい(ワクチンは、 痛い・腫れることが多い)
②食べ物は?
●正規ルート
●炎症なし
→食べ物は、自分自身ではないが、「必要なもの・味方」として、許容すべきものとして〇として、識別・記憶されるようになる。
③しかし、食べ物であっても、不正規ルート(傷口等)からであると
●炎症とともに、認識されるので、敵(×)と識別・記憶されると、食物アルレギーに・・
●×とされなくとも、いつも食べているものすなわち、〇でない場合、
→免疫は常時監視を余儀なくされる
→貴重な免疫リソースを費消
→がん等が発生しても、対処できなくなる可能性がある

(3)もっとも免疫が活躍している場所が消化管
消化管内には、極めて多くの微生物が存在しているが、すべてと戦い続けることは困難
→自身に悪影響を与えない細菌等に対しては、許容し、それらの競争的排他環境を利用し、自身の免疫環境を構築している
→即ち、味方をしてくれる細菌等を多く識別しているほど、免疫機能を高め得る可能性がある。
→免疫の成熟度合いの一つ指標として、味方ともいえる常在腸内細菌に対する寛容度合いがあり得る「腸内細菌叢の多様性の高さは免疫の成熟度の指標の一部となり得る」

(4)腸内細菌叢の多様性と死亡率・各種疾患との関連について
①死亡率
②各種疾患との関連(嘔吐・下痢・血便、がん、腎疾患、心疾患)

(5)歯周病は慢性微小炎症を引き起こし、全身性の疾患リスクを高め得る
①歯周病関連菌と死亡率
②歯周病関連菌と各種疾患との関連(嘔吐・下痢・血便、がん、腎疾患、心疾患)

●4.「保険の保険」の実装に向けて ~ 当たり前のことを当たり前に ~

(1)私たちの身体は食べたもの出来上がっている
①ペットフードと酸化=老化の関係
開封後1か月等の期間をかけてペットフードを与えていることが多い

→嗜好性アップのため脂でコーティングされていることが多い
→脂は酸素に触れると酸化しやすい。酸化=老化。従って、個包装・開けたてフレッシュ・フードがあり得る。
*酸化ストレスは老化関連の要素の一つ。
②単調なたんぱく源
ペットフードは、経済的理由から、「鶏・小麦・トウモロコシ」を用いていることが多い。
長期に亘る単調なたんぱく源の摂取は、アレルギーリスクを高め得て、免疫の成熟に資していな可能性がある。

→多様な食材を用いた新たな「ペット・フード」があり得る。

(2)歯周病は感染症であり、万病のもととなる可能性
①野生時代は毎食が口腔ケア
②歯周病は、バイオフィルム(細菌たちの住処であり・バリア)を形成し、口腔内のみならず、唾液に乗り消化管に流れ込み続けていることで、消化管免疫にも影響を与えている可能性がある。
③ヒト同様に、口腔ケアが重要と言える。

私たちは、医療費が上がり続ける未来を前提に逃げるのではなく、医療構造リスクそのものを引き受けにいきます。

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