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2022年7月26日

どうぶつの身体と心の健康を守るブリーディング支援におけるアニコムの取り組み

アニコム ホールディングス株式会社(代表取締役 小森 伸昭)は、子会社であるアニコム損害保険株式会社・アニコム先進医療研究所株式会社・アニコム パフェ株式会社等と連携し、ペット業界の更なる健全な発展とどうぶつたちの幸せのため、グループ全体でブリーディング※1に関する総合的な支援を行っています。アニコムのブリーディングに対する考え方やこれまでの取り組み、今後の展望についてお知らせいたします。

※1 「ブリーディング」という言葉には様々な意味があると認識していますが、ここで用いるブリーディング(breeding)には、「繁殖(単性生殖が可能な種の場合は当該個体の増殖、両性生殖の場合は当該ペアから生まれる個体を子孫として継代していくことに加え、生命種自体の存続行為という意味を含みます)、交配、受胎、妊娠、出産、授乳、離乳」という意味だけでなく、「育種(同じ生命種である例えば犬の中における品種の作出や改良等)、訓練、教育、しつけ、教養、行儀作法等」の意味も含めております。つまり、本来のブリーディングは、単なる繁殖活動にとどまらず、適切な性成熟、出来得る限り奇形や重篤な遺伝病を防ぐ等に資する適切な遺伝ペアの決定、胎教、安全な出産、無理のない授乳・離乳、その後の同種動物との社会化はもちろんのこと、人間を含む他の生命種との良好な関係を可能とするしつけ等までを含んだ生命活動の根源として用いらせていただきます。

1.まず始めに、「動物愛護」から「動物福祉」を目指したいと考えております。

(1)アニコムグループのこれまでとこれから

本邦の動物愛護は、様々な理由から改善するべきところが依然多いと認識しておりますが、近年はペット業界内外を含む多くの方のご理解はもとより、法制度の改正も進み、ようやく本邦においても改善が進んでいく社会情勢が構築されつつあると思っております。こうした中において、我々アニコムグループでは、20年超の予防型保険を目指す取り組みの中で、100万件以上のご契約をいただいており、疾病の発生原因に紐づく遺伝に関わる先天的な原因や、しつけやフード・生活環境等の後天的な要因等多面的な角度から、種々の問題を予防・解決する方策を模索してまいりました。アニコムグループとしては、ペット保険制度自体の基礎固め、遺伝子検査等の原因探求を行うための組織の整備をようやく終えたことから、第二期創業期としてより具体的な疾病の予防や、社会的課題解決をアニコムグループの価値創出の最重要分野として位置付け、本年5月に中期経営計画として発表しておりますので、ご確認いただけますと幸いです。

(2)「動物愛護」と「動物福祉」

ペット業界における様々な課題の解決に際しての切り口として「動物愛護」と「動物福祉」といった2つの観点から議論を進めていく考え方があると認識していますが、アニコムグループでもそのように捉えております。また、双方の定義には、幅広いものがあると認識していますが、ここでは、動物にとっての痛み・苦しみ・不快感・恐れ等のマイナスをゼロにもっていくことに主たる注力をする領域を「動物愛護」とし、そこから心地よさ・喜び・楽しみ・幸せ・豊かさ・更にはどうぶつ自身が未来を開拓していけるようなゼロからプラスにもっていく領域を「動物福祉」として意味づけさせていただきたいと思っております。

今後、皆様と幅広くオープンな議論を行っていくことで、「動物愛護」「動物福祉」双方において、よりよいペットの環境を作り上げていきたいと考えています。しかしながら足元は、マイナスを出来る限りゼロに持っていくことが重要であると考え、本稿では主として「動物愛護」についての基本部分の総論について、お知らせさせていただきます。この後に、多くの方や組織の方のご意見をお聞かせいただき、オープンな議論を通じ、一歩一歩着実に「動物愛護」のレベルを引き上げ、更には、世界をリードできるような「動物福祉」を発信できる日本のペット文化の実現に向け、努力していきたいと考えています。

2.ブリーディングに対するアニコムの支援について

(1)犬猫のブリーディングの特殊性と、遺伝子検査の必要性

①生命の存在と遺伝子の関係

全ての生命は多様な環境の中で、その環境変化に応答する形で誕生したと考えられていると認識しています。また、動物や植物や細菌等々全ての生命は種は違えども、たった四文字の遺伝記号であるATGCのみで書かれた遺伝子を持っており、生命の繁殖(継代)は当該遺伝子によって説明が為されることから、繁殖とは遺伝子を受け継ぐことであると考えています。

②遺伝子とは

一方、遺伝子には何が書かれているかについてですが、「生命とは環境応答するもの」ということからしますと、生命が環境変化の中でどのように生き延びていくか(例えば、寒くなって体温が維持できなくなりそうならば、全身を震わせ体温を高める等)の手法論が全て書かれていると考えています。また、有限な生命からすれば、応答しなければならない環境変化は無限にあり得ますので、遺伝子の進化は出来る限り、多くの生きるための手法論が書かれている方向に進化していったと考えています。即ち、生命は、遺伝的多様性を出来得る限り高めるような交配を実現することで、多種多様な自然環境に応答できる『強い命』へと進化し生き抜いてきたと考えています。

③一方で、ペットである犬猫等の場合

▲遺伝子検査につながるアニコムのデータ集『家庭どうぶつ白書』

しかしながら、人間が生み出したペットである犬猫は違います。犬猫を代表とするペットにおける品種は、その遺伝的特徴をより際立たせるべく、人間が主としてインブリーディング(近しい血縁関係での交配を指します)を繰り返すことで生み出してきました。そのためペットは他の生き物と比べて非常に血が濃く、遺伝的多様性が低下することとなり、結果として、人間が欲する形質は色濃く遺伝させることに成功しましたが、環境応答し力強く生きるための遺伝情報が欠損する等、当該品種特有の病気(遺伝病)も色濃く受け継いでしまったと考えています。

極めて長期間にわたる人間の身勝手な欲求で、「一人で力強く生き抜いていく力よりも、人間に愛し愛される力」を優先し、遺伝子的に引き出されてしまった、地球上で最強の力である「無償の愛」をフルパワーで届けてくれる存在、それが我々が愛する現代のペットの存在であると考えています。

近年では、更に小型化や見た目の可愛さを追求するあまり、史上最悪の遺伝的多様性の低下がみられており、世界各国で健全なブリーディングの在り方が議論されていると認識しています※2

遺伝病のリスクを正しく認識し、遺伝子検査を通じて遺伝病にならないような適切なブリーディングを行うことは、ペットを生み出した私たち人間の責務であり、より健康な犬猫を飼い主様にお迎えいただく我々を含めたペット業界の責任であると考えています。

※2 ノルウェーでは2022年1月に、イングリッシュ・ブルドッグとキャバリア・キング・チャールズスパニエルの繁殖を違法とする判決が出されています。この判決は、呼吸器の疾患など、ブルドッグなどの短頭種が持つ遺伝的疾患に対し懸念を示したもので、遺伝病を防ぐための更なる規制強化に繋がる可能性があるとして、国際的な注目を集めています。

(2)コーギーやトイ・プードルの遺伝病の撲滅・管理について

こうした中、アニコムグループでは2017年から本格的な遺伝子検査事業を開始し、ペットの遺伝病撲滅に取り組んでまいりました。その結果、実際にコーギーやシェパードに多いことで知られる「変性性脊髄症(Degenerative Myelopathy:DM)」を“撲滅”するに至りました。DMは、後肢麻痺から始まる神経症状を呈し、最終的に死に至る非常に辛い病気です。このDMにおいて、2017年には40%の親犬がアフェクテッド※3だったところ、アニコムグループが提供する遺伝子検査を実施するブリーダー・ペットショップ様において、2021年にはほぼアフェクテッドが発生していない状態になっています。

また、日本で人気No.1犬種のトイ・プードルで多い、視力が徐々に低下し最終的に失明する「進行性網膜萎縮症(Progressive Retinal Atrophy:PRA)」についても、この病気を適切に“管理”できる状態となっています。

▲アニコムが遺伝子検査に取り組んだ結果、コーギーのDMはほぼ0に

※3 アフェクテッドとは、遺伝子検査の結果として示されるものの1つで、他の結果の種類として「クリア」「キャリア」が存在します。検査対象の遺伝病の原因変異を持っていない場合を「クリア」、2本ある染色体の内、1本に原因変異を持っている場合が「キャリア」、2本ともに原因変異を持っている場合を「アフェクテッド」といいます。「クリア」であれば当該遺伝病の発症リスクはありません。劣性遺伝の遺伝病では「アフェクテッド」の場合のみ発症するリスクがあり、「キャリア」ではリスクはありません。一方で、優性遺伝の遺伝病では、「アフェクテッド」、「キャリア」ともに発症リスクがあります。

(3)医療技術や繁殖技術の提供により、健康な犬猫が生まれる土壌を

前述の遺伝病や各種の先天性異常を避けたブリーディングはもちろんのこと、親犬・親猫に負担をかけないブリーディングの研究を進めるほか、往診による医療技術の提供を通じ、犬猫が健康で安全に出産・子育てできる環境整備の支援を行っています。こうした取り組みを更に徹底してまいります。

▲左:遺伝子検査や腸内細菌検査を行うアニコムの研究施設/右:健康(疾病)の指標となる腸内細菌(ヘリコバクター科、カンピロバクター科)

(4)ペット業界の未来を担う人材の育成

▲「しっぽの郷」外観(イメージ図)

アニコムグループの業務提携先である学校法人国際ビジネス学院や、各運営者と連携し、2022年12月にシェルター・ドッグカフェ・ブリーディング施設を併設した複合型施設「しっぽの郷(さと)」をオープン予定です。

当該施設でアニコムが直接ブリーディングやシェルター運営を行うわけではありませんが、動物愛護・動物福祉に関する種々の点で問題点が発生した場合、アニコムグループ全体で是正に向けた努力を行い、万が一、重篤な点において改善が図れない場合は、運営の停止に向けて行動をとってまいります。

当該施設のシェルターでは、保護動物の引き取り・譲渡活動を行う予定です。新しい飼い主様への譲渡が促進されるよう、どうぶつの身体のケア(健康診断・医療サポート・フード)・心のケア(しつけ※4)を十分に行うとともに、このケアを学校教育の場としても活用いたします。

また、当該施設で行われるブリーディングはどうぶつの「身体と心」の両面の健康に配慮した健全なものとなるよう、アニコムグループでは科学的知見をもとにした各種サービス(遺伝子・腸内細菌検査、交配・出産サポート、医療サポートなど)の提供を通じた体制整備を行ってまいります。このブリーディング施設は従来のような“閉ざされた”場(いわゆるパピーミルのような場)ではなく、改正動物愛護法に則したオープンなブリーディング施設としていく予定です。

※4 精神の安定を図り、人間や他のどうぶつとの関係性を円滑に保持できるよう心のケアを行います。どうぶつと人双方のストレスをできるだけ解消し、より幸せな共生生活ができるよう最大限サポートします。

3.ブリーディングに対するアニコムの展望

(1)需給ギャップと殺処分等について

①犬猫の販売価格は一定の水準を保っており、その面だけを取ってみれば、経済学的には、過剰供給とはなっていないと考えています(過剰供給となっていれば、価格の低位安定等が通常、見られるが、見られていない)。

②過剰供給にはなっていない・・・それどころか、一部価格は高騰している状況が見られるにも関わらず、一方で、極めて残念ながら、相当数の殺処分が行われている。これは、結果として、何らかのアンマッチが存在していると考えています。今後は、それらの原因について、都道府県ごとに、多くの皆様の協力を得ながら調べ、広くオープンに議論を行っていく中で、アニコムグループとしては、現に出来得る施策、および再発防止のために必要な未来に向けた対策を打ち出し、それらを実行するステップも開示させていただき、日々一歩一歩でありますが、殺処分がゼロになるように、努力してまいります。

(2)パピーミルとは正反対の健全なブリーディングの実現に向けて

2019年6月に動物愛護法が改正され、特にブリーディング事業者に対しては、飼養施設の数値基準、従業者の員数に対する飼養上限頭数、繁殖の回数・年齢等の制限など、これまでよりも犬猫の愛護を重視した内容となりました。改正の背景として、一部の利益第一主義のブリーダーによる劣悪な環境で乱繁殖させられてきた繁殖犬・繁殖猫の飼養環境改善があるものと理解しています。

「しっぽの郷」でのブリーディングにおいては、十分な運動環境の確保や栄養管理、健全な体調・精神の保持に向けた定期的なチェックを含め、改正動物愛護法の遵守はもちろんのこと、遺伝性疾患の管理・撲滅等を目的とした遺伝子検査サービス、近親交配レベルに配慮した交配サポート、より健康・安全に配慮した出産サポート、獣医師等による健診・医療サポート等をアニコムグループが支援します。より理想的な子育て環境を実現するブリーディング、販売※5・譲渡(販売・譲渡が困難な場合の終生飼養含む※6)を未来にわたって提供できるよう、将来の優良ブリーダー等の育成に向けて国際ビジネス学院と連携し、日本のブリーディング分野の発展に貢献していく施設を目指します。

また、当該施設では、親個体・子ども個体ともに、全頭へのマイクロチップ装着および遺伝子検査実施により、個体識別に万全を期すとともに、全頭の飼養状況を最低年1回以上の頻度で確認を行い、飼養困難等の事情が発生した場合には、全頭アニコムグループが責任をもって、次に飼育いただける方を探すか、終生飼養を行うことを目指してまいります(その場合には当該飼養履歴を全頭について情報提供してまいります。※提供先は、行政や秘密保持契約を締結した先に限ります)。

なお、何らかの事情で、逸走してしまった場合等でも、保護が可能となるよう、生息域と思われる箇所から取得した糞便から、遺伝子検査を行い、個体の特定もしくは、血縁関係の特定を行い、責任の在りか(一般飼い主様、アニコムを含めた事業者起因等)を明確にしつつ、保護・飼養および再発防止策が構築できる体制を整えてまいります。特に、重篤な先天性異常や、原因不明の死亡等を極限まで減らすべく、原因不明の死産・産後の死亡については、同じような子を二度と生まないために、誠心誠意全個体について解剖等を行い、原因の特定・再発防止に努めてまいります。

アニコムでは、どうぶつと人の豊かで幸せな共生生活の実現に向けた「どうぶつの健康な心と体を生み出すブリーディング」を目指し、どうぶつへの痛みや苦しみといったマイナス要素を取り除く「動物愛護」のみならず、どうぶつの心の豊かさや幸せといったプラス要素をもたらす「動物福祉」を実現してまいります。

※5 望ましい生体販売として、ブリーダーと消費者双方に求められるべきもの(①ブリーダーに求められるべきもの:親犬・親猫およびそれらの遺伝子検査結果、日常の生活環境、適切な治療機会の付与、子犬・猫の適切な社会化等、②飼い主様に求められるべきもの:生体に関する理解度、飼育環境の整備、終生飼育への責任感)があると理解しており、アニコムは一歩ずつそこに近づけるよう努力を重ねていきます。
※6 「しっぽの郷」においては飼養キャパシティが限られているため、終生飼養が必要などうぶつが増えてきた際は別途飼養施設の建設・運営の検討を行います。

4.人とどうぶつの豊かで幸せな暮らしのために

こうしたより健全なブリーディングへの取り組み以外にも、アニコムグループではさまざまな取り組みを行っています。
具体的には、保護動物の譲渡活動の支援、熊本大地震や西日本豪雨・静岡豪雨といった災害発生時のペットの救援・支援、新型コロナウイルスに罹患した方のペットを無償でお預かりする「#stayanicom」、ウクライナの戦争による避難民のペットの医療費支援、三重県との連携を通じたどうぶつ保護施設「ani TERRACE(アニテラス)」の開設など、多彩な取り組みを行ってまいりました。

災害支援に関する取り組み(2022年静岡豪雨、2018年西日本豪雨、2016年熊本大地震)

・コロナ感染者のペットを無償でお預かりする「#stayanicom」プロジェクト

・戦火におけるウクライナ避難者のペットとその飼い主の支援(IFAWへの募金、ペットの医療費支援)

・三重県「VISON」に4月29日にオープンした保護動物のシェルター施設「ani TERRACE」


5.ペットと人・・・その未来

最後に我々の想いを再度述べさせていただきます。

昨今の戦争危機や、災害等の中で、ペットを置いて避難ができない・・・結果、飼い主様も亡くなられたということを見聞きすることが多くなりました。これは、ペットのために命をかけても構わない・・・即ち、「ペットは人間の生命をかける程大切な存在」であることが、一定程度、世界中の人々に受け入れられてきたその結果であると思っております。世界中に無数の商品やサービスがあるにも関わらず、人間が愛する人、子どもや家族以外には、その生命をかけることはほとんど見られない・・・ある意味とても我儘な人間が、ペットにだけは命をかけるに至った。ペットが使役動物であった時代はこのようなことは一般的でなかったと思っています。

何故、このようになったか・・・それは、現代のペットが、人間の伴侶として品種改良される中で、近親交配度合いが相当強くなってしまっており、一人で生きる力は極論すれば0%で、その分、愛し愛される力100%にさせられてしまったから。実際に、そのように遺伝子的に改良されてしまった彼らはどのようにして積極的に自分の生命を守っていけばいいのでしょうか?その悩みの末に出てきたのが、世話をしてくれる我々人間に対し、「無償の愛」で接することであったと思っています。そして、その「無償の愛」を受け、そのどうぶつを愛した人間はどのように、その愛に報いることができるでしょうか?そうです「無償の愛」はどんな武力よりも核兵器よりも強い力・・・だから、ペットを愛した飼い主様達は、自分が死ぬことが分かっていても、戦地や災害が発生した、その地に、愛するペットと残り続けた・・・と。

我々アニコムグループは、「無償の愛」で愛してくれる彼らがより幸せに過ごせるように、そして、こうした「無償の愛」を踏みにじるような、罪の無い数多くの生命を人間の身勝手な行為で犠牲に晒すような戦争行為を含めた蛮行を人間が起こさずに済むように、優しくなれるよう、微力ながら努力してまいります。

【お問い合わせ先】

アニコム ホールディングス株式会社 広報担当
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