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2025年5月9日
アニコム ホールディングス
獲得免疫の健全化によるがん等の疾患予防の実現と企業価値創出戦略について
当社グループ(親会社:アニコム ホールディングス株式会社、代表取締役 小森 伸昭)では、保険・医療に関するビッグデータの分析を通じ、獲得免疫のバランスと疾患発症リスクとの関係性を明らかにすることで、予防医療の推進による健康寿命延伸の実現といった企業価値向上を目指しています。これらの取り組みについて、「獲得免疫の健全化によるがん等の疾患予防の実現と企業価値創出戦略について」と題して公表いたします。
▶獲得免疫の健全化によるがん等の疾患予防の実現と企業価値創出戦略について

●1.本開示の主たる内容
(1)獲得免疫の健全化が、がん等の重大疾患リスクの軽減に寄与する可能性を示唆していること。
(2)犬・猫において、多くの疾患の発症を促す基礎病因として、『獲得免疫未成熟症(仮称)』が存在するという仮説*の提唱をしていること。
(3)良性腫瘍の発症に関連する免疫の不調を早期に特定・対応することで、悪性腫瘍を含む他疾患の予防的介入につながる可能性を検討していること。
(4)若齢発症リンパ腫等を説明する新たながん発症モデルとして、「ワープ型がん発症理論(Warp Carcinogenesis)」の適用可能性があること。
(5)腸内細菌叢の多様性低下および歯周病関連菌等に起因する消化管の「慢性微小炎症」が、多くの疾患の発症を促す基礎病因の一つとなる可能性を示唆していること。
(6)同多様性低下やそれに伴う慢性微小炎症が、免疫細胞の疲弊を促し、『早過ぎる老化(premature aging)』を引き起こす可能性があること。特に良性腫瘍の発症に明確な加齢性が確認され、腸内細菌叢の多様性低下と統計的に関連していることから、症状がないまま静かに進行する老衰的死亡にも関連する可能性が統計的に示唆されていること。
*本記載は現在検討段階の仮説であり、将来的な特許出願等を視野に入れた具体的技術、診断基準、治療法等の詳細なメカニズムの開示を含むものではありません。また、医学的な診断や疾患の治療を目的とした内容ではありません。
●2.疾患診断から免疫診断へ、保険会社が果たすべき使命
(1)早期疾患診断のためには、細胞レベルでの微小炎症と免疫反応を把握する免疫診断が不可欠である。免疫の変動は病気と直結せず確率的であるため、包括的な健康データを持ち、疾患との確率的関連を専門的に分析可能な保険会社が社会的役割をより主体的に担うべきである。
(2)生命の本質は遺伝子であり、即ち情報の塊である。感染症やがんとの戦いは、遺伝情報の操作を巡る情報戦である。特に、多様な腸内細菌叢は、有益な遺伝情報を提供し、免疫バランスの維持や病原菌の排除、自然抗原の提示を通じて、宿主の情報戦を支援する。逆に、細菌叢の多様性低下は情報戦での脆弱性を高め、がんや感染症リスクを上昇させる。
がん等の若齢発症は、その意味で免疫情報の不足による情報戦の敗北とも言える可能性がある。
(3)保険会社は、社会における情報バンクとも呼ぶべき存在であり、改めて、保険会社が果たすべき社会的使命として、「保険提供者から積極的な予防医療推進主体への進化」が必要であると認識し、その社会的使命を果たしていく。
●3.犬・猫における「2つの重大な謎」とその解明の必要性
(1)重大な謎その1
通常は診察日当日の直接の死因として上位に挙げられにくい「嘔吐・下痢・血便」を主訴とする症例が、犬・猫では全年齢にわたり非常に多く、それらが結果的に致死的な疾患の存在を示していること。
(2)重大な謎その2
哺乳類は高度ながん抑制機構を進化させてきたにもかかわらず、犬・猫においては若齢期から著しく高いがん発症率を示していること。
(3)これらの謎の解明に向けて
当社グループでは、犬80万頭・猫30万頭、年間保険金請求件数450万件、腸内細菌叢に関して犬60万検体・猫22万検体以上など、世界最大規模のビッグデータを分析し、以下の点を統計的に示した。
①がんに「その後なりやすい疾患」と逆に「なりにくい疾患」が存在すること。
②免疫機構の一部を担う腸内細菌叢の多様性の低下が、腫瘍性疾患を含む広範な疾患と統計的に有意な関連性またはその傾向があること。
●4.「2つの謎」の解明の中で、明らかとなった「3つの疾患発症に至る経路」
(1)慢性微小炎症経路
毎日単調な高加工度食品を摂取することにより、腸内細菌叢の多様性が低下し、競争的排他環境が破綻し、これが消化管を中心とした慢性微小炎症を引き起こす可能性がある。
その結果として、がんを含む多くの疾患との関連が示唆されている。
(2)『獲得免疫未成熟症(仮称)』経路
①多細胞生物は生涯にわたる大規模な遺伝子変異を制限しており、その構造的な脆弱性を克服するために獲得免疫システムを常にバージョンアップさせる必要がある。
②しかし、この免疫システムの成熟(バージョンアップ)には、多様で有益な自然抗原との安全な接触が不可欠である。
③毎日単調な高加工度食品のみを摂取すると、多様な自然抗原との接触機会が減少し、結果として獲得免疫が十分に成熟せず、『獲得免疫未成熟症(仮称)』の発症要因の一つとなる可能性が考えられる。
(3)ワープ型がん発症経路(Warp Carcinogenesis)
①腸管関連リンパ組織(GALT)ではB細胞が自然抗原を取り込む。
②慢性微小炎症が継続すると、B細胞が細菌由来の遺伝子断片を取り込む可能性があるという仮説を提唱しているが、これは現在検証中の新しい概念である(1つ目のワープ経路)。
③免疫システムが異常なB細胞増殖に対して過剰に反応し、比較的短期間で免疫機能の疲弊が起こる可能性があることを仮説として提唱している(2つ目のワープ経路)。
④これら2つのワープ経路が活性化された場合、若齢期においてB細胞性リンパ腫が急激に発症する(ワープ型がん発症)可能性を仮説として提唱している。
*本理論は現在検証段階の新たな医学的仮説であり、既存の診断・治療法を否定するものではない。また、この仮説をもとにした診断・治療法の提供は現段階では行っていない。
これらの発症経路の背後には、「先進国の犬・猫特有の単調な高加工度食品摂取習慣」と「不十分な口腔ケアによる歯周病の蔓延」という共通した要因が存在している。
この2つの単純かつ根本的な問題が、免疫システムの慢性的な未成熟状態を引き起こし、結果として様々な疾患リスクを高める要因となっている可能性がある。
また、これらの新たな疾患モデルの知見は、犬・猫を超え、ヒトの健康管理や新たなヘルスケアモデルの基盤となる可能性がある。
●5.「当たり前を当たり前にし、予防を実現、未来を創る」
(1)犬・猫は口腔内の抗菌ペプチド『リゾチーム』が比較的少ないことや、適切な口腔ケアが不十分であることなどが、歯周病のリスク要因と考えられており、口腔ケアが健康管理に寄与する可能性が示唆されている。
(2)また、現代の犬・猫は先進国特有の毎日単調な高加工度食品摂取により、多様な自然抗原との接触機会が減少し、獲得免疫の健全な成熟に影響を与えていると考えている。腸内細菌叢は皮膚や免疫に関連する酪酸やビタミンK2などの栄養素の産生に関与していると考えられており、その多様性低下は、免疫機能および免疫記憶や健康維持に影響を及ぼす可能性がある。
(3)近年、先進的な動物病院やペット業界では口腔ケアや多様な食事の重要性が認識され、その普及に伴い、当社グループにおいても、歯周病関連疾患の保険金占有率が増加する一方、慢性腎臓病や僧帽弁閉鎖不全症の占有率が減少する傾向が確認されている。
まとめとして、適切な口腔ケアと多様な食事の摂取により腸内細菌叢の多様性が向上し、免疫機能の健全化につながる可能性が示唆されている。特に、獲得免疫の健全化は革新的かつ実効性の高い予防戦略であり、ペットの健康寿命延伸に寄与する可能性がある。
当社グループは保険・医療グループ会社としての社会的使命である真の疾患発症原因を探求し続け、更に予防を推進することで、ペットの健康維持を図ってまいります。
また、保険事業等の収益力向上に応じ、更なる企業価値創造を視野に、人財やロボット支援下オペ・医療AI等にも順次投資を強化してまいります。
参考資料
・ペット保険における競合分析及び更なる発展に向けて (2023年2月7日)
・「ペット業界が果たすべき使命」をサポートするアニコムグループ戦略 犬77万頭 猫24万頭のデータをベースとした「入って健康になる保険」について(2023年6月22日)
・失われた1万年を取り戻す 保険・医療データが実現する「健康革命」(2024年5月10日)
・『入って健康になる保険』から『入ってがんを予防する保険』へ(2024年11月11日)
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